佐川美術館 樂吉左衞門館水庭に埋設された地下展示室と、水面に浮かぶように建設された茶室で構成されたユニークな美術館。「守破離(しゅはり)※」をコンセプトに十五代樂吉左衞門自身が設計の創案・監修しました。 収蔵作品は主に2000年以降に作陶された焼貫黒樂茶碗や黒樂茶碗、焼貫茶入、焼貫水指など。常に新しい樂吉左衞門の作品をご覧いただけます。
※千利休の「規矩作法 守りつくして 破るとも 離るるとても 本をわするな」から来た言葉
樂吉左衛門氏は2007年以降、4年間にわたり毎夏、フランス南西部コレーズ地方Loubignac(ルビニャック)村に滞在し、茶碗、花入、水指など多くの作品を制作しました。前展では吉左衞門氏のフランス制作の中から茶碗を中心に紹介いたしましたが、今回、第三回「吉左衞門X」展では、それらの中から花入・水指を中心に、パリ在住の洋画家Bruno Mathon氏の絵画作品と共に展観いたします。Mathon氏は、これまで追求されてこられた象徴性・思索性の高い具象表現から、長い沈黙、思索の年月を経て、抽象的なドローイングの世界を見いだされました。氏が追求されてきた象徴的・哲学的世界は、具象を離れ簡素な線や面・点となってより純度を増し、固有の時空を創出し、存在との関係を画面に定着させています。マトン氏と樂氏は15年来の友人で、互いに強い共感を覚え精神的な交流を育ててこられました。Mathon氏の絵画、樂氏の作陶は、素材は異なりますが強い共通性をもって引きあっていることが感じられます。今回はさらにフランスという共通した風土を介して、より一層親密な作品世界が相互に展回されています。フランスLoubignac村で制作された樂氏の今回の展示作品は、フランス・リモージュの白土、地元ルビニャック村で掘り出された赤土、スペインの黒土など、素材との新鮮な出会いに加え、角材で叩きながら制作するという新たな技法を見いだし、斬新で力強い彫刻的な造形を見せています。打ち下ろされた角材の痕跡を烈しく残してゆがみ変形し再び構築される土は生命のように烈しく伸びやかで、それはもはや花入と言うよりも一箇の彫刻オブジェと見ることができます。京都・樂家で焼かれる樂焼とは異なる土や釉薬、窯によって創りだされた吉左衞門作品の斬新で力強い魅力を皆様に感じて戴くと共に、Bruno Mathon氏との共演、響き合う絵画と陶芸の融合・思索する眼差しを感じていただければと存じます。